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確定拠出年金、難しいと思っていませんか?
実は企業様にも従業員様にもメリットが大きい退職金制度です。
1.会社よりも従業員の掛金を多くすることができるので、少ない会社負担で始められます。
2.通常の運営管理機関が引き受けない20人以下の中小企業でも導入することができます。
3.社会保険料や税金が安くなるという副次的な効果により、利息のほとんど付かない定期預金で運用しても、利回りが期待できます。
4.従業員自身で、この制度へ参加するかどうかを決めることができます。参加しない場合には、従来通りの給料が支払われます。
5.厚生年金保険の被保険者であれば、経営者も加入することができます。
中小企業に普及していた税制適格退職年金制度(以下「適格年金」といいます。)は平成24年3月で廃止になりましたが、続いて厚生年金基金も廃止が決まり、財務状況の悪化した基金は平成31年3月までに解散する機関が相次いでいます。
適格年金が廃止された際には、多くの企業が、この制度で積み立てられた退職金原資を、国の制度である「中小企業退職金共済制度(以下「中退共」といいます。)」へと移換したと言われています。
一方、厚生年金基金については、制度自体が複雑でなかなか理解しにくいため、廃止後のことについては、ハッキリ言って「思考停止状態」といった経営者も多いかもしれません。
退職金の考え方としては、賃金の後払いであるとも言われますが、従業員の老後の資金として、国の制度である厚生年金を補完する制度として位置づけられているという側面もあります。
従来、企業の退職金制度は、「従業員の退職時の基本給に勤続年数が長いほど高くなる料率を掛けて、退職金額を算定する」というものですが、高度成長期の賃金が上昇に伴い、企業が従業員に将来支払わなければならない退職金が急激に増加することとなり、企業にとっては隠れた債務として、深刻に受け止めざるを得ない事態となってきました。
そのため、退職金が基本給に連動しない制度へと切り替えたり、退職金制度そのものを廃止する企業が増えるようになったのです。
ところが、従業員の所得が伸び悩むという現在の低経済成長の環境においては、若い従業員ほど老後の資金について真剣に考える堅実派が増えていると言われています。
適格年金や厚生年金基金が廃止されるといった今の状況においては、企業が検討する退職金制度の選択肢は限られたものになっています。
中小企業の限られた資金と、従業員の堅実な貯蓄志向をマッチさせて、労使が協力して老後の資金を作る新しい退職金制度として有望な「選択制確定拠出年金」について検討してみてはいかがでしょうか。
これからご紹介する制度は、事業主・社員双方の合意の元で掛金原資を負担しあい、企業の制度として将来にそなえる新しいタイプの確定拠出年金制度です。
AさんとBさんは、いずれも年齢40歳です。
Aさんは、月給40万円(諸手当込み)ですが、勤務先には退職金制度がないため、老後の準備に毎月給料から2万円を積み立てています。
一方Bさんは、月給38万円(諸手当込み)ですが、勤務先には退職金制度があり、会社がBさんのために毎月2万円を拠出しています。
方法は異なりますが、老後の備えに毎月2万円積み立てていますので、同じ期間積み立てて、運用利回りが同じであれば、この二人が老後に受取る金額は同じになるはずです。
しかし、自分で積み立てているAさんと、会社の退職金制度があるBさんでは、実は将来どちらかがお得になるという結果になります。果たしてどちらが老後に受け取る金額が多くなるのでしょうか?
答えは「退職金制度」のあるBさんです。
Bさんは給料が少ない分、社会保険料も所得税も少なくなります。さらに、手取り給与から老後の資金を積み立てる必要がないために、手取りはAさんより多くなるのです。
それでは、二人の給料の手取り額を計算してみましょう。
Aさん(①) | Bさん(②) | 差額(②-①) | |
---|---|---|---|
給与月額(諸手当込み) | 400,000円 | 380,000円 | 20,000円 |
社会保険料 | 61,448円 | 56,989円 | 4,499円 |
所得税 | 11,610円 | 10,380円 | 1,230円 |
積立貯金 | 20,000円 | 0円 | 20,000円 |
差引支給額 | 306,902円 | 312,631円 | -5,729円 |
注)社会保険料、所得税の計算では、二人とも独身で、東京の会社に勤務しているものと仮定。
AさんとBさんがそっくり同じ生活をしている訳ではないので、あくまで計算上の話ですが、手取りの多いBさんがその分を更に貯金に回せば、老後の蓄えは更に厚くなるというわけです。
一方、Aさんの勤務するC社の経営者は、次のように考えています。
「うちの会社は、従業員の給料はそれなりに精いっぱい出している。また、退職金制度がないことには引け目を感じているが、これ以上の人件費をねん出することには経営上無理がある。トータルの人件費を変えないで、従業員の老後の資金を作る上手い仕組みがあればいいのだが。」
日本では、平成13年(2001年)10月に、確定拠出年金が導入されました。当時「401k」という名称で呼ばれ話題になったものです。
この制度は、「年金」と言っていますが、公的年金とは全く別物で、企業が退職金制度の一種として設ける制度です。「公的年金」と区別して「企業年金」ということもあります。
事業主が拠出した掛金は、従業員ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される仕組みです。
最初に登場したBさんの勤務先が導入しているのが、この「確定拠出年金制度」です。
この制度は、会社が従業員のために掛金を拠出するものですが、従業員も掛金を出せるように設計することができます。これをマッチング拠出といいます。従業員の自助努力で老後の資金を厚くしようというわけです。
この考え方を一歩進めて、従業員の給与から掛金を天引きするのではなく、最初からその分給与を減らして、会社が直接拠出したらどうなるでしょうか。
C社がこれを導入した場合には、AさんもBさんと同じ効果を受けられるわけです。
しかも、C社は従業員の給料を減らした分、社会保険料の会社負担分が減るので、その浮いた資金を掛金の上乗せ等に回すことができます。
ここまでの説明を読んで、「社会保険料」が安くなるというところに魅力を感じる方は多いと思います。実際に、この点だけを強調して制度導入を勧める営業手法が横行しているようです。
しかし、社会保険料が安くなるのは、あくまでも副次的な効果であって、この制度導入の本来の趣旨は、Aさんのように「自助努力で老後資金を積み立てようとする働く者の意欲に報いること」と、C社の社長のように「従業員の福利厚生を真剣に考える経営者を支援すること」です。
当事務所がアドバイザーになっている「クロスヘッド総合型確定拠出年金制度」は、厚生労働省の方針である、中小企業に退職金制度を普及し、従業員の福利厚生制度を充実させるということに沿って、適法で、適正な制度設計と従業員教育を実施しております。
この制度には、社会保険料や税金が安くなるというメリットがありますが、デメリットもありますので、制度設計の際はメリット、デメリットを比較考量しながら、慎重に検討する必要があります。
①給料が少なくなるので、標準報酬月額が下がり、将来貰える年金が計算上は少なくなる可能性があります(ただし、専門家が試算したところ、影響は軽微であるとの結論が出ています)。
②将来離職した場合の失業給付、病気や事故で働けないときの傷病手当金、障害を負ったときの障害厚生年金等が減る可能性があります。
③給料が少なくなることにより、残業手当の計算基礎額が減ります。ただし、従業員が拠出した掛金相当額を残業計算基礎額に算入する旨の規定を就業規則に盛り込むことによって解決できます。
④従業員は掛金の運用先を自分の判断で選択しますので、元本が保証されない投資信託や債券を選択した場合は、将来資産が元本割れするリスクがあります。
⑤制度導入時に申請・登録費用、コンサルタント料と社員教育のための研修費がかかります。
一時期、大企業では退職金制度を廃止し、掛金等の予算を月例給与に振り替えて支給するという動きがありました。中小企業でも適格退職年金制度が廃止されたのを契機に、退職金制度そのものの廃止を検討されたところもあると思います。
しかし、先ほども少し触れましたが、最近では若い従業員ほど、将来のために資金を準備しようという堅実な考え方をする人が増えている傾向にあります。このような従業員のニーズに応えながら、会社の負担を出来るだけ少なく抑えて導入できる企業年金を、是非ご検討ください。
詳しい内容は、下記のホームページにアクセスしてください。
一般社団法人確定拠出年金アドバイザリー協会
http://www.crosshead.co.jp/dc/
経営者様、人事労務ご担当者様が知っておくべきニュースをピックアップし、解説を加えました。
毎月発行しておりますので是非ご覧ください。